大学院生の生活(博士)
2009年度博士入学 山崎 哲
2012年の3月をもって,無事に博士課程を修了することができました.博士課程の3年間で,研究・論文執筆・学会(研究集会)発表といった様々な体験をすることができ,楽しいことも苦しいこともありましたが,有意義な博士学生生活でした. 大雑把にまとめると,自由ですが「孤独」な3年間でした. まず,研究に関して博士課程で感じたのは,自身の研究テーマ(とそのごく周辺)に関しては,自分が一番知識を持っていなければならないということでした.修士課程までは指導教員の先生から教わることが多かったですが,博士課程からはほぼ対等な研究者として研究を進めるようなスタイルに変わったと思います.これは「孤独」でもありますが,同時に非常にやりがいのあることでした.研究を進めるための知識や情報が必要なときに,周囲からアドバイスを受けることができない状況になったとき,あるいはどの論文を読んでも答えが見つからないときに,自分が,本当に研究の最前線にいるのだということを感じることができました.これは,博士課程で得た大きな経験の一つであったと感じました.
二つめは論文の執筆に関して述べます.私は特に,英語を使って研究内容を論文にまとめたことが大きな経験になったと感じています.博士課程では,投稿論文や博士論文の執筆を主として,修士課程よりも研究のことを書く機会が多くなりました.もちろんその言語は日本語に限らず英語でも書きます.私の場合,論文を日本語から英語に変換していく過程で(もちろんここでは指導教員の先生の添削が大きな力添えになりましたが),自身の文章の論理がより強固になっていくのを感じました.おそらくこれは,母国語を英語に変換していく過程で必要のない部分が削ぎ落されて,論理が明白になっていくからだと思います.投稿論文や博士論文で100ページにも及ぶ英語を書くことは非常に大変でつらいこともありましたが,それによって私の持っているスキル(論理性・書く力・読む力)を向上させることができたと感じています.
最後に学会発表についてです.博士課程に経験した多くの発表の機会は,自身の研究の内容を,他の研究者や研究の情報を必要とする非研究者に理解してもらう重要性を教えてくれました.研究を理解してもらえなければ,その学問の発展にも,研究のアウトリーチにも貢献できないことになるからです.博士課程では研究の成果が増えてくるので,国内外の学会や集会で発表する機会を多く得ます.その多くの場面で,私は,「伝わらなかった」と反省することがありました.博士3年間の経験値を積んで,博士課程の後半には以前よりも多くの方々から質問をもらったり,研究について多くの方に名前を覚えてもらったりすることができるようになったと思います.このことが後に,就職活動にも多いに役に立ったと考えています.
無事修了し,海洋研究開発機構に研究者として採用をいただきました.このような有名な研究機関に就職できたのは,運の要素が大きいですが,上記の3点に関して,一心不乱に進んだことも助けになったと思っています.(ただし,私は計画性のなさから,就職活動もろくにできなかったために,修了間際まで先生方に大きな心配をおかけしました.博士課程でのセルフマネジメントが至らなかったことを多いに反省しています.)そして何より,私がこのように博士課程をやり遂げることができたのは,自身の力だけでなく地惑の皆様の大きな支えがあったからだと思っています.
私の研究人生はこれからが本番ですし,上の3点に関してもまだまだ研究者としては初学者だと思っています.これからも,地惑で得た経験を私の軸としてこれからの人生を歩んで行こうと思います.九大地惑の先生方・先輩方・同級生・後輩の皆様・事務の皆様大変お世話になりました.皆様に様々な形で恩返しができるようにこれからも精進して行きたいと思います.