太陽地球系物理学

惑星間磁場が真北向きで北半球が真夏の時の磁気圏を夕方側から見た図。太陽は左方向にある。色は電離気体の圧力を表し、赤線は磁場トポロジー(注)領域の境界を表す。(画像をクリックで画像のみを表示)

惑星間磁場が北向き時の磁気圏磁場トポロジー。ドーナツは開いた磁力線(open)と閉じた磁力線(closed)の境界を、円筒は開いた磁力線(open)と惑星間磁力線(IMF)の境界を表す。地球はドーナツの内部にある。矢印は境界面上の磁力線を表す。惑星間磁場の向きや地球磁場双極子の傾きが変わっても磁場トポロジーは変わらない。(画像をクリックで画像のみを表示)


(注)磁場トポロジー地球周辺の磁力線は(1)両端とも地球につながっているもの(閉じた磁力線、closed)、(2)両端とも地球につながっていないもの(惑星間磁力線、interplanetary magnetic fieldを略してIMF)、(3)一端のみが地球につながっているもの(開いた磁力線、open)に分類されます。開いた磁力線はさらに、(3a)一端が北半球につながっているもの(north lobe)と(3b)一端が南半球につながっているもの(south lobe)に分類されます。これら磁力線が占める各領域が相対的にどういう位置関係にあるかを地球の「磁場トポロジー」と言います。トポロジーは「やわらかい幾何学」とよばれており、対象の「形」にこだわらない幾何学です。例えば、通常の幾何学では、平面上の円・三角形・正方形・長方形・平行四辺形は異なる図形として扱われますが、トポロジーでは区別せず同じ図形として扱います。もし平面がゴムのようなやわらかいもので出来ていれば、各図形を連続的に変形してお互いに重ね合わせる事ができます。トポロジーではこのような図形を同一視します。この考え方を地球周辺の磁力線に応用します。

研究分野の概要

名称 太陽地球系物理学
教員 准教授 渡辺 正和
研究内容 太陽から地球大気に至る空間で起こる電磁現象の研究
キーワード 太陽, 地球, 磁場, 数値シミュレーション
Webサイト http://denji102.geo.kyushu-u.ac.jp/stp/

太陽地球系物理学とは

太陽からは可視光が放射されて地球の生命活動に大きな影響を及ぼしていることはよくご存知だと思いますが、実は可視光以外にも、太陽は電波・X線・高エネルギー粒子・磁場を放出しています。気象学が主に太陽放射に関連する現象を扱っているのに対し、太陽地球系物理学は太陽からやってくる高エネルギー粒子と磁場が地球に及ぼす影響を研究する学問分野です。その扱う対象は、地球の上層大気から惑星間空間に至る広大な領域をカバーしています。

太陽風-磁気圏-電離圏のつながり

太陽からやってくる粒子は電離した電子やイオンで「太陽風」と呼ばれています。ところで、地球は固有磁場をもっており、電離した太陽風が地球に吹き付けると、地球周辺に太陽風が入っていけない空洞ができます。これが「磁気圏」です。一方、太陽からやってくる磁場は地球周辺では地球表面磁場の1万分の1と非常に弱いですが、太陽風のエネルギーを磁気圏に伝える上で重要な役割を果たしています。磁気圏に流入したエネルギーは地球上層100‐500kmの「電離圏」に伝えられます。電離圏は、太陽からの紫外線や磁気圏から降ってくるオーロラ粒子が地球大気を電離させることによって作られます。

九州大学では、主にグローバル数値シミュレーションを用いて、太陽風と磁気圏の相互作用や、それが引き起こす磁気圏・電離圏の諸現象を研究しています。太陽風や磁気圏のように完全電離した気体では、気体の運動と磁場が物理を決定します。例えば、磁場トポロジー(上注)がどういう構造をもっているかは極めて重要です。これらコンピュータの計算結果を人間の頭で「解釈」することにより物理を理解していきます。コンピュータがすべてやってくれるわけではありません。シミュレーションによる研究においては、現象の背後にある本質的な物理過程を抽出することが何よりも大切です。

太陽地球系物理学

惑星間磁場が真北向きで北半球が真夏の時の磁気圏を夕方側から見た図。太陽は左方向にある。色は電離気体の圧力を表し、赤線は磁場トポロジー(注)領域の境界を表す。(画像をクリックで画像のみを表示)

惑星間磁場が北向き時の磁気圏磁場トポロジー。ドーナツは開いた磁力線(open)と閉じた磁力線(closed)の境界を、円筒は開いた磁力線(open)と惑星間磁力線(IMF)の境界を表す。地球はドーナツの内部にある。矢印は境界面上の磁力線を表す。惑星間磁場の向きや地球磁場双極子の傾きが変わっても磁場トポロジーは変わらない。(画像をクリックで画像のみを表示)


(注)磁場トポロジー地球周辺の磁力線は(1)両端とも地球につながっているもの(閉じた磁力線、closed)、(2)両端とも地球につながっていないもの(惑星間磁力線、interplanetary magnetic fieldを略してIMF)、(3)一端のみが地球につながっているもの(開いた磁力線、open)に分類されます。開いた磁力線はさらに、(3a)一端が北半球につながっているもの(north lobe)と(3b)一端が南半球につながっているもの(south lobe)に分類されます。これら磁力線が占める各領域が相対的にどういう位置関係にあるかを地球の「磁場トポロジー」と言います。トポロジーは「やわらかい幾何学」とよばれており、対象の「形」にこだわらない幾何学です。例えば、通常の幾何学では、平面上の円・三角形・正方形・長方形・平行四辺形は異なる図形として扱われますが、トポロジーでは区別せず同じ図形として扱います。もし平面がゴムのようなやわらかいもので出来ていれば、各図形を連続的に変形してお互いに重ね合わせる事ができます。トポロジーではこのような図形を同一視します。この考え方を地球周辺の磁力線に応用します。

研究分野の概要

名称 太陽地球系物理学
教員 准教授 渡辺 正和
研究内容 太陽から地球大気に至る空間で起こる電磁現象の研究
キーワード 太陽, 地球, 磁場, 数値シミュレーション
Webサイト http://denji102.geo.kyushu-u.ac.jp/stp/

太陽地球系物理学とは

太陽からは可視光が放射されて地球の生命活動に大きな影響を及ぼしていることはよくご存知だと思いますが、実は可視光以外にも、太陽は電波・X線・高エネルギー粒子・磁場を放出しています。気象学が主に太陽放射に関連する現象を扱っているのに対し、太陽地球系物理学は太陽からやってくる高エネルギー粒子と磁場が地球に及ぼす影響を研究する学問分野です。その扱う対象は、地球の上層大気から惑星間空間に至る広大な領域をカバーしています。

太陽風-磁気圏-電離圏のつながり

太陽からやってくる粒子は電離した電子やイオンで「太陽風」と呼ばれています。ところで、地球は固有磁場をもっており、電離した太陽風が地球に吹き付けると、地球周辺に太陽風が入っていけない空洞ができます。これが「磁気圏」です。一方、太陽からやってくる磁場は地球周辺では地球表面磁場の1万分の1と非常に弱いですが、太陽風のエネルギーを磁気圏に伝える上で重要な役割を果たしています。磁気圏に流入したエネルギーは地球上層100‐500kmの「電離圏」に伝えられます。電離圏は、太陽からの紫外線や磁気圏から降ってくるオーロラ粒子が地球大気を電離させることによって作られます。

九州大学では、主にグローバル数値シミュレーションを用いて、太陽風と磁気圏の相互作用や、それが引き起こす磁気圏・電離圏の諸現象を研究しています。太陽風や磁気圏のように完全電離した気体では、気体の運動と磁場が物理を決定します。例えば、磁場トポロジー(上注)がどういう構造をもっているかは極めて重要です。これらコンピュータの計算結果を人間の頭で「解釈」することにより物理を理解していきます。コンピュータがすべてやってくれるわけではありません。シミュレーションによる研究においては、現象の背後にある本質的な物理過程を抽出することが何よりも大切です。